トラックを制するブガッティ、「ディーボ」

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ブガッティはシロンをベースとしたサーキット志向モデル「ディーボ」を、8月24日にアメリカのカリフォルニア州で開催される「クウェイ・モータースポーツ・ギャザリング」で披露するようだ。

 

ディーボという車名は、「タルガ・フローリオ」で1920年代後半にブガッティ・タイプ35Bと35で2度の優勝を果たしたフランス人ドライバー「アルベール・ディーボ」に由来する。

 

「タルガ・フローリオ」とは、国際的なスポーツカーレースとしては世界で最も歴史が古く、イタリアのシチリア島にある山岳路を舞台に行われたレースである。

 

そんな過酷とも言えるレースから着想を得たディーボは、ブガッティのサーキット志向モデルとして、シロンとは異なるボディデザイン、俊敏なハンドリングとコーナでの軽快なフットワーク、そして、これまでにない強力なダウンフォースを携えてデビューする。

 

直線ではなく、コーナーを駆け抜ける一瞬こそが至福の瞬間とされるディーボは、一体どのようなマシンなのだろうか。

 

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▶シロンとは異なる外観

ブガッティは、ディーボの詳細についてあまり多くを語っていないが、先日ブガッティのフェイスブック上で公開された動画を見る限り、リアエンドには大型の固定式リアウィングと立体のLEDテールライトが確認できる。

 

また、フェイスブック上には、トリコロールがあしらわれたサイドシルらしきエアロパーツの画像が掲載されている。これだけの情報では外観全体を予想することは難しいが、ブガッティが言う「シロンとは異なるスタイリング」ということを考えると、外観は専用のエアロパーツに身を包んだ本格的なレーシングカー仕様になるのではないかと思われる。

 

シロンが直線番長であるとするなら、ディーボはマクラーレンのようにコーナーを制することに最高の歓びを見出すファンタジスタと言えそうだ。

 

ファンタジスタだけに、孤高の存在であることが一目で分かるルックスで現れるのだろうか。

 

▶動力性能はシロンと同じか

ディーボがサーキット志向のマシンであることを考えると、いたずらにパワーアップをするのではなく、バランス重視のセッティングが施されるものと思われる。したがって、動力性能はシロンとほぼ同じではないかと考えられる。

 

8ℓW16クアッドターボは、1,500ps/1,600Nmを発揮し、0ー100km/h加速を2,5秒でこなし、最高速度は420km/hに達する。好奇心をそそる超絶怒涛のパワーであると同時に、手に負えないやんちゃぶりが頭の中をよぎる。

 

これだけのパワーをサーキットでうまく使い切るには、相当なダウンフォースと強力なブレーキ、そして強靭かつバランスのとれたサスペンションを必要とするだろう。

 

▶パワーからバランス重視へ

まずは、軽快なボディーコントロールのための軽量化は必至だろう。そして、ダウンフォースを最大化させるために、ブガッティの言う「シロンとは異なるスタイリング」は、風を味方にするような特殊なボディ形状へと変貌を遂げると思われる。ちなみに、マクラーレン・セナは250km/h走行時に800kgものダウフォースを生み出すボディを持つ。となれば、車重とパワーで勝るディーボは、マクラーレン・セナよりもさらに大きなダウンフォースが必要になると考えられる。

 

強大なダウンフォースで挙動を安定させることができれば、コーナーでの軽快なフットワークがさらに輝きを増すこととなるだろう。キレのある鋭いコーナリングを実現すべく、サスペンションはさらに締め上げられ、トルクベクタリングをはじめとする数々のメカを総動員すれば、ドライバーが描いたラインを気持ちよく疾走できるはずだ。

 

モンスター級のパワーをしっかりと受け止め、余すことなく路面へ伝えられるバランスの良さがディーボでは最優先事項となることは間違いない。

 

そして、ジダンのマルセイユ・ルーレットのようにサーキットで軽やかに、そして華やかに舞う姿を見たいものだ。

 

▶王者奪還の使命を背負うディーボ

市販車世界最速というと、まず頭に浮かぶ名前はブガッティという方も多いだろう。しかし、2010年にブガッティ ヴェイロン16.4スーパースポーツが樹立した431km/hという世界最速記録は、2017年にケーニヒセグ アゲーラRSが樹立した447km/hによって破られ、市販車世界最速の称号はケーニヒセグ アゲーラRSへと移った。

 

そして、アゲーラRSは0ー400ー0km/hでも、ブガッティ シロンより5.52秒速い36.44秒で市販車世界最速記録を持つ。現在のブガッティは最高速度において、王座をケーニヒセグに奪われている状態が続いているのである。

 

一方、ディーボは直線で奪われた王座をコーナーで奪い返すべく、同じワーゲングループのランボルギーニ アヴェンタドールSVJに戦いを挑むことになる。アヴェンタドールSVJはつい最近、ドイツのニュルブルクリンク北コースにおいて市販車世界最速となる6分44秒97というタイムを叩き出した強者だ。

 

さて、ディーボはニュル最速の称号を手にし、一つ目の王座奪還を実現できるか。ディーボの初戴冠への期待が高まる。

 

▶復活するコーチビルディング部門

ブガッティの創業当初にあったコーチビルディング部門は、ディーボの誕生を機に復活することとなった。熟練工による手作業での組み立てを意味するコーチビルディングは、複雑で繊細なボディとメカを搭載するディーボには最適な生産方式なのだろう。

 

コーチビルディング部門にとっても復活第1作目となるディーボには、職人の並々ならぬ思いが込められて仕上げられることだろう。

 

▶今後の展開

ディーボは40台限定生産で、価格はおよそ6億5,000万円(2018年7月30日時点)となる。そして、ディーボのワールドプレミアは冒頭でも紹介した通り、モントレー・カー・ウィーク期間中の8月24日に開催される「クウェイ・モータースポーツ・ギャザリング」で行われる。

 

いまだ謎多きディーボの全貌が明らかになるまで、あと1ヶ月を切った。

 

全てにおいて究極を備えたブガッティ。

そのブガッティが創るサーキット志向のマシンとはいかなるものか。

 

我々の想像をはるかに超えたマシンとだけ、今は想像しておこう。

Photo source:BUGGATI

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