デ・トマソ・パンテーラの再来か、アレス・パンサー

with No Comments

イタリアの高級カスタムカーブランド「アレス・デザイン」は、ランボルギーニ ウラカンをベースにした「アレス・パンサー」を21台限定で、今年10月以降に発売する。

 

アレス・パンサーは、外観はデ・トマソ・パンテーラをモチーフにし、中身はランボルギーニ ウラカンをベースとするイタリアを代表する新旧スーパーカーを巧みに融合させた高級カスタムカーだ。

 

さて、「アレス・デザイン」とは、聞き慣れないブランド名である。

 

それもそのはず、「アレス・デザイン」は、前ロータスCEOのダニー・バハール氏によって2015年に設立され、その歴史はわずか3年足らずしかない。

 

しかし、フェラーリで有名なイタリアのモデナに本拠地を構える「アレス・デザイン」は、メルセデス・ベンツGクラス、ポルシェ911 GT3、ベントレー ミュルザンヌなどのカスタムカーを手掛けており、その独創性には、世界中から熱い視線が注がれている。

 

それでは早速、アレス・パンサーとはいかなるクルマか、見ていくとしよう。

 

SPONSORED

SPONSORED

 

▶デ・トマソ・パンテーラを再現したスタイリング

アレス・パンサーのエクステリアは、地面から高いところに位置した尖がったフロントノーズから始まり、リトラクタブル・ヘッドライト、リアバンパーの中央部から突き出した4本のテールパイプ、ホイールデザインに至るまで、正真正銘、デ・トマソ・パンテーラの再来と言って過言ではない。

 

そして、見た目は往年の名車であるボディは、最新の軽量素材であるカーボンファイバー製。驚くことなかれ、部分的ではなく、フルカーボンである。

 

▶ボンネットの下にはウラカンが眠っている

エンジンは、ウラカンの自然吸気V10をベースに改良が施され、排気量は5.2ℓから5.6ℓへと拡大。パワーは、610psから650psへと強化されている。トルクは変わりなく、560Nmだ。そして、トランスミッションは、専用のシフトプログラムへと書き換えられた7速LDFが組み合わされる。

 

現在、アレス・パンサーは最終テスト段階である。スペックについては、さらに過激なものになる可能性は十分にある。その証拠に、0-100㎞/h加速や最高速度などの動力性能に関する数値は、まだ一切公表されていない。

 

気になる走りの仕立ては、バハール氏がフェラーリやロータスで経営の指揮を執ってきた人物であることを考えると、サーキット志向になるのではないかと思う。

 

外観と中身の関係を知ると、オリジナルのデ・トマソ・パンテーラが、デ・トマソ製のボディにフォード製の大排気量エンジンを搭載した、2社の合作モデルであったことを思い出す。

 

アレス・パンサーの場合は、2社の合作というだけでなく、新旧という時代の合作でもある。往年の名車の持つヴィンテージ感漂うカリスマ的な魅力を、現代の最先端技術で見事に引き立てている。

 

当時、一世を風靡した栄光を、再び、後世でもつかみ取るかのように。

 

▶高級カスタムカーブランドならではの生産方式

「アレス・デザイン」は高級カスタムカーブランドである。したがって、顧客の要望に沿う「ビスポーク」と、熟練工による手作業での組み立て「コーチビルディング」は不可欠の要素。

 

顧客の要望に沿って、1台1台手作業により組み立てられるアレス・パンサーは、来年の1月から本格始動するモデナの18,000㎡に及ぶ巨大な自社工場で、他のモデルよりも先んじて生産が開始される。

 

このカスタムカー、注文してから完成までにかかる期間は、24週間。つまり、半年以上もかかる。

 

忘れた頃に、ガレージに収まるのか。それとも、半年以上、今か今かと待ちわびるのか。

 

皆さんは、どちらのタイプだろうか。

 

▶今後の展開

アレス・パンサーは、およそ6,650万円(2018年8月7日時点)からとなり、今年の10月以降に発売される。

 

「アレス・デザイン」は、かつて時代を席巻した名車のエッセンスを、現代の最新技術で蘇らせる。今後も、アレス流の独創的な手法で、アレス・パンサーのような「懐かしさを纏った最新のスーパーカー」を、さらに世に送り出していくだろう。

 

▶スーパーカーの新しい世界観

現代のスーパーカーは、強迫的なほどに、パフォーマンス至上主義である。

 

しかし、「アレス・デザイン」は、そんなパフォーマンス至上主義に一石を投じる。多少のパフォーマンスを犠牲にしても、美しさやカッコ良さを表現しても良いではないかと言わんばかりに。「パフォーマンスだけに支配されない、自由なデザインのスーパーカー」という価値観を生み出している。

 

エアロダイナミクスのことを考えると、地上からあんな高い位置にフロントノーズを持ってくることはない。風がもろにぶつかるリトラクタブル・ヘッドライトの採用など御法度だ。

 

現代のスーパーカーにあるまじきタブーを何の躊躇もなくサラリとやってのけてしまうところに、「アレス・デザイン」の確信めいた強い信念が見えてくる。

 

パフォーマンスに直結するデザインだけでなく、純粋に魅力あるデザインのスーパーカーがあってもいい。

そして、そんな新しい世界観に共感し、価値を見出してくれる人が必ずいる。

 

そして、社名にあえて「デザイン」という言葉を入れたのには、往年の名車がそのデザインから放つ普遍的な魅力を再興したいという思いが込められているのではないか。どれだけ時が経とうとも、「やっぱり、いいなぁ」と、しみじみと頷いてしまうのが名車の魅力。そして、そこに、デザインが持つ魅惑の芸術性が、未来永劫息づく。

 

良いものを残したい、蘇らせたいと思うのが人情だとしたら、アレス流のアプローチは異端でも何でもなく、とてもピュアなクルマ造りに思える。

 

スーパーカーという大きな括りで見ると、ライバルは多いかもしれない。しかし、いぶし銀のシルエットに身を包む最新のスーパーカーという括りで見ると、そこには、ブルーオーシャンが広がっている。

 

イギリスのデイビッド・ブラウン・オートモーティブは、「アレス・デザイン」と同じようなアプローチで、クラシックなアストンをモチーフにしたスピードバックと、クラシックなミニの持つ魅力を現代流に見事に再現したミニ リマスタードというクルマを世に送り出している。

 

「アレス・デザイン」が踏み込もうとしているジャンルは、まだまだ、これからのジャンルである。

そこには、新たな挑戦と可能性しかない。

 

Photo source:ARES Design, DAVID BROWN AUTOMOTIVE

SPONSORED

SPONSORED