永遠の男の憧れ、ゴールドフィンガー DB5 復刻版

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8月20日、アストンマーティンは、映画「007」シリーズのボンドカーとして有名な「DB5」を25台限定で復刻生産することを発表した。

 

DB5は、1964年制作の映画「007」シリーズ第3作目「ゴールドフィンガー」に登場し、ショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドの愛車として、当時だけでなく今も男が憧れるクルマの象徴となっている。その後も、DB5はシリーズ6作品に登場し、ボンドカーとしてジェームズ・ボンドと双頭をなす映画のシンボルとなっている。

 

さて、「ゴールドフィンガー DB5復刻版プロジェクト」は、映画「007」シリーズの制作会社であるEONプロダクションとアストンマーティンの協働で進められる。

 

この特別なDB5は、オリジナルのDB5が誕生したイギリスのニューポート・パグネルにあるアストンマーティン ワークスで、映画に使われたDB5と寸分違わず忠実に再現されるようだ。

 

もちろん、イギリス秘密情報部MI6の秘密兵器開発主任である「Q」が開発した様々な秘密の武器や小道具も、「007」シリーズの14作品に関わった特殊効果のスペシャリストであるクリス・コーボールド氏とQビスポーク部門の協働で、精巧に再現されるという。

 

では、大成功を収めたDB4 GT復刻版に続く「ゴールドフィンガー DB5復刻版プロジェクト」とはどのようなものか、探ってみることとしよう。

 

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▶忠実に再現されたスペック

復刻版DB5の組み立てを任されたアストンマーティン ワークスとは、アストンが誇る往年の名車を蘇らせる部門である。顧客の要望に基づき、古くなったクルマをオリジナルの状態へとレストアすることはもちろん、往年の名車を復活させ販売する事業も手掛けている。

 

さて、復刻版DB5のスペックであるが、映画に登場したモデルと全く同じの4.0ℓ直列6気筒エンジンは、286ps/400Nmを発揮する。

 

その動力性能は、0-100㎞/h加速を7.3秒でこなし、最高速度は238㎞/hに達する。

半世紀以上も前のクルマとは思えないパワーと速さは、今も衰え知らずである。

 

ボディカラーは、「忠実な再現」を徹底すべく、「シルバー・バーチー」一色だけとなる。

 

こんなにも「忠実な再現」がされようとしているのに、とっても悲しいお知らせが…

 

実はこのDB5復刻版、公道では走れないというのであるから、意気消沈である。

 

DB5復刻版はエンスー向けではなく、コレクター向けのモデルということなのである。

本当に残念だ…

 

▶ハリウッド仕込みの小道具たち

気を取り直して、もう一つの「忠実な再現」ぶりであるボンドカーに内蔵されている秘密の武器や小道具をのぞいてみよう。

 

秘密の武器や小道具の再現を任されたクリス・コーボールド氏は、映画「インセプション」で第83回アカデミー賞視覚効果賞を受賞したスゴ腕の専門家で、氏が関わった「007」シリーズ14作品の内8作品で特殊効果のスーパーバイザーを務めており、忠実に再現どころの話ではない出来栄えになりそうだ。

 

ハリウッドでも名を轟かせる彼の助けがあれば、Qビスポーク部門も鬼に金棒であろう。

 

敵の追跡から逃れるため、回転式ナンバープレートを回転させて敵を翻弄し、フロントウィングに内蔵された機関銃はコックピットのギアシフトを後ろへ動かすと、その姿を現す。

 

これでいつでも迎撃が可能だ。

 

そして、後方からの敵の攻撃にはリアウィンドの後ろから防弾用の盾がせり出し、ショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドとボンドガールを護る。

 

それでも執拗に追いかけてくる敵には、ホイールのセンターナットから三つの刃を備えた手裏剣のような武器が回転しながら外へと突き出て、敵を蹴散らす。

 

センターコンソールのレーダー追跡装置を見ながら、運転席のドアに格納されている無線電話でQやMと交信するのはお決まりのシーン。

 

いよいよ万事休すとなった時、脱出用シートを起動させ、ボンドカーから空へ向かって勢いよく脱出する。

 

これらの秘密の武器や小道具が、すべて再現されるかどうかは定かではない。しかし、一線級の映画関係者が関わっているのだから、大きな期待をしないわけにはいかないだろう。

 

アストンの熟練工と超一流の映画の特殊効果スタッフが手を組んで造り上げる正真正銘の「ボンドカー」は、究極の男の憧れそのものだ。

 

▶「超」が付く破格のプライス

「ゴールドフィンガー DB5 復刻版」の価格は、およそ3億8,800万円 (2018年8月20日時点)。「超」が付く破格のプライスは、さすがに、熱心な大富豪のコレクターぐらいしか手を出さない価格だろう。

 

シリーズ17作目「ゴールデンアイ」で使用された1965年式のDB5がオークションでおよそ3億9,140万円で落札されたことを考えると、妥当な値段なのかもしれないのだが…

 

▶実は3台余分に生産される

冒頭で、「ゴールドフィンガー DB5 復刻版」は25台の限定生産と述べたが、実は3台余分に造られるそうである。

 

1台はアストンマーティンに、もう1台はEONプロダクションに、そして最後の1台はチャリティー オークション用に造られるそうである。こんな話を聞くと、ついついあと何台かさらに造られるのではないかと勘ぐってしまいたくなるが、精巧な小道具や秘密の武器のことを考えると、さすがに難しそうな気もする。

 

ここは、アストンの発表を信じることとしよう。

 

▶今後の展開

生産は来年から開始され、2020年に顧客へのデリバリーが予定されている。なお、オーダーの受付はまだ開始していないということだが、受注が解禁されれば、世界中のコレクターから注文が殺到し、瞬く間に完売することになるだろう。

 

▶緻密な戦略家、アストンマーティン

アストンマーティンは、今回の「ゴールドフィンガー DB5復刻版プロジェクト」で、往年の内燃機関の名車を蘇らせる一方で、ラグジュアリーEVブランドとしての布石もしっかり打っている。その手始めに、今年3月のジュネーブモーターで、4シーターのラグジュアリーEVである「ラゴンダ・ビジョン・コンセプト」を披露した。

 

これは、2021年に再開される「アストンマーティン ラゴンダ」ブランドの記念すべき第1号モデルとなる。この「ラゴンダ・ビジョン・コンセプト」を携えて、ラグジュアリーEVブランドとして新たなアストンマーティンの扉を開こうというのである。

 

このようなブランドの再編やEVシフトは、アンディー・パーマーCEO率いるアストンマーティン グループが、2015年に発表した「セカンド センチュリー プラン」という長期のビジネスプランに基づく。

 

実は、新型のDB11、ヴァンテージ、DBSスーパーレジェーラ、そして近い将来デビュー予定のアストン初となるSUV「DBX」は、すべてこの「セカンド センチュリー プラン」に沿って市場に投入されているのである。

 

マクラーレンの「トラック25」というビジネスプランも、EVに攻めの姿勢で臨むものであるが、100年以上の歴史を持つ先輩のアストンマーティンは約10年も前から、EVを見据えたビジネスプランを緻密に練り上げ、粛々と実行に移していたのである。

 

男という生き物は、戦略家という言葉にどうも惹かれてしまう。

自分を評する言葉として、一度は言われてみたい。

 

「走る芸術品」を創る「戦略家」、アストンマーティン。

知れば知るほど、魅力に溢れたブランドだ。

 

Photo source:ASTON MARTIN

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