VWのEVシフトが本格始動、MEBプラットフォーム

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フォルクスワーゲンは、「ELECTRIC FOR ALL」というスローガンの下、フォルクスワーゲングループのEVに、新開発したEV専用のプラットフォーム「MEB」を採用することを明らかにした。 MEBの導入により、EVシフトを一層加速させる。

 

フォルクスワーゲンは、この最新のMEBプラットフォームをベースとしたモデルを市場に投入し、2020年までにおよそ15万台のEVを販売する目標を掲げている。目標とする15万台のうち、10万台がMEBの第1弾となる「ID.」シリーズとなる。

 

そして、2022年までには、27車種のMEBベースのEVを市場に投入し、グループ全体で1,000万台のEVがMEBをベースに生産されることになるようだ。

 

内燃機関のクルマで、「MQB」という革新的なプラットフォームを世に送り出したフォルクスワーゲンは、プラットフォーム開発においては時代の先駆者である。その卓越した開発力は、「MEB」という形でEVの世界でも発揮され、これからのEV時代をリードして行くことは間違いない。

 

「ELECTRIC FOR ALL」というスローガンには、EVをより多くの人の身近なものにするという意味が込められている。フォルクスワーゲンは、MEBプラットフォームにより、これまでニッチ市場であったEV市場を内燃機関に代わるメジャーな市場へと引き上げる構えだ。

 

EVの課題である、高価格、短い航続距離、長い充電時間をMEBプラットフォームによって解決する。それでは、MEBプラットフォームによって、いかにしてEV固有の課題をクリアし、身近なものにするのかを見ていくこととしよう。

 

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▶EVを求めやすい価格でより多くの人に提供

フォルクスワーゲングループは、生産台数世界一を誇る世界最大の自動車メーカーだ。一貫したブランドコンセプトに基づいて造り込まれた実用的で高品質なクルマは、多くの高級ブランドも手本とするほど。しかも、求めやすい価格で販売され、顧客の満足度も非常に高い。

 

「質実剛健」で実直なクルマ造りの姿勢は、一般消費者の無意識に見事に浸透しており、「ワーゲン=良いクルマ」というイメージを確立している。

 

そんなワーゲングループが、「ELECTRIC FOR ALL」というスローガンの下、これからのフォルクスワーゲングループのEVに「MEB」を採用することで、世界最大のスケールメリットを大いに活かす。大量生産することで、価格を低く抑え、今までEV購入に二の足を踏んでいた顧客の背中をポンと押す価格設定が可能となる。もちろん、フォルクスワーゲンの内燃機関からの乗り換えも強力にプッシュするだろう。

 

フォルクスワーゲン曰く、「これまでのEVでは不可能だった価格設定を実現する」という。

 

ディーゼル不正問題で、およそ1兆2千億円という多額の損害賠償をめぐる株主代表訴訟が起こされている状況でも、売り上げは前年比でプラスを維持。このブランド力というか製品力は、他の追随を許さない。

 

製品力に含まれる価格競争力でも世界一のフォルクスワーゲンは、近い将来あっと驚く価格で、我々を喜ばせてくれるだろう。

 

▶より大きなバッテリーで、より遠くへ

EVの難点の一つと言えば、航続距離だ。内燃機関に慣れ親しんだ者からすると、その短い航続距離ゆえ、EVは「使えないクルマ」に感じてしまう。遠出など、とんでもない。常に充電状況のことが頭の片隅にあり、リラックスしてドライブできない。クルマ好きには困った問題だ。

 

この点、フォルクスワーゲンは、より大きなバッテリーが搭載可能なMEBによって解決するという。従来よりもどの程度大きなバッテリーを搭載できるかは明らかにされていないが、「大容量バッテリー=より長い航続距離」なので、これまでのEVの常識を覆すような長い航続距離を実現してくれることを期待したい。期待通りに航続距離が延びれば、家族や友人とのロングドライブもこれまで以上に安心して楽しめるだろう。

 

▶急速充電で充電時間短縮

MEBの第1弾となる「ID.」シリーズは、急速充電に対応し、急速充電ステーションを使えば、30分で80%の充電を完了できるという。家庭用充電器では、この短時間の充電はまだ難しいが、フォルクスワーゲンは「ID.」シリーズ用に壁に設置する家庭用充電器「フォルクス ボックス」を開発している。どの程度充電時間を短くできるかは明らかにされていないが、充電時間の短縮は、EV競争の要素の一つであることは間違いない。

 

とはいえ、現状のガソリンスタンド同様に、急速充電ステーションの整備が進めば、長い充電時間のストレスから解放されどころか、家庭用充電器すらいらないのではとも思える。

 

この点、BMW、ダイムラー、フォード、フォルクスワーゲングループが設立した最大350kWのEV用急速充電ネットワークの合弁会社「IONITY(イオニティ)」は、2020年までにヨーロッパ全土に400ヶ所のEV急速充電ステーションを整備する計画だ。

 

▶着々と進むEV生産体制

MEBの第1弾となる「ID.」シリーズは、本社のあるヴォルフスブルク工場で研究開発が行われ、ザクセン州のツヴィッカウ工場で生産される。ツヴィッカウ工場は、およそ1,600億円が投じられたMEB専用工場の第一号であり、欧州最大のEV生産工場となる。

 

そして、フォルクスワーゲングループのブラウンシュヴァイク工場、ザルツギッター工場、カッセル工場には、およそ8,000億円を投じて、MEBベースのEVの開発と生産をできるようにする。

 

これまでeゴルフやパサートGTEなどのバッテリーを製造してきたブラウンシュヴァイク工場では、今後、年間50万個のバッテリーシステムを製造できるようにする予定だ。

 

今年から、MEBのローターやステーターの製造を開始するザルツギッター工場では、今後のバッテリーセルやモジュールの製造に向けたノウハウ蓄積のための研究開発が行われている。そして、カッセル工場では、MEB用の電動モーターの製造を今年末から開始する。

 

技術及び生産体制ともに、抜かり無い。

 

あまりの隙の無さに、「質実剛健」よりも「完璧」という言葉が頭の中をこだまする。

 

「完璧」なクルマ造りで、最新のテクノロジー「EV」を本当に身近なものにしてくれるか、これからもワーゲンから目が離せない。

 

Photo source:Volkswagen

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