祝意を優雅に彩る、2台の特別なDB11

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7月4日、アメリカが独立記念日で盛り上がっている頃、大西洋の向こう側のイギリスでは、アストンマーティンが贅を極めたビスポークサービス「Q Personalisation service」で創り上げた2台の特別なDB11を披露した。

 

1台目はヘンリー・ロイヤル・レガッタDB11 ヴォランテというワンオフモデルで、2台目はDB11クラシック・ドライバー・エディションという20台限定のクーペとヴォランテだ。

 

蛇足ながら、これらの特別モデルはパワートレインなどには手が入れられていない、あくまでも装いを特別に仕立てたモデルである。では早速、1台目の特別なDB11から見ていくことにしよう。

 

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▶ヘンリー・ロイヤル・レガッタDB11 ヴォランテ

車名の頭文字「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」というのは、1839年に発足した伝統ある世界的なボート競技会の名称で、毎年7月4日~8日の5日間、テムズ川上流の小さな町ヘンリーで催されている。

 

夏のバカンスを告げるイギリスの初夏の風物詩には、毎年30万人以上の観客が世界中から訪れ、のどかな田舎町で爽やかな風が吹き抜けるテムズ川を滑走するボート競技に酔いしれる。

 

実は、ヘンリー・ロイヤル・レガッタDB11は今回が2作目となるモデルで、昨年のDB11クーペが第1作目なのである。第1作目がクーペということで、2作目はコンバーチブルのヴォランテということなのだろう。

 

誕生までの経緯はどうであれ、「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」とこの大会を支援するアストンマーティンとのパートナーシップを記念した特別なワンオフモデルは、やはり贅を極めた芸術品なのだ。

 

▶ヘンリー・ロイヤル・レガッタDB11の仕立て

ボディカラーは「ホワイト ストーン ペイント」に、ボート競技会で使用されているオールを彩る「ペール ブルー」がアクセントを利かせる。グロスブラックのホイールと特殊な陽極酸化塗装が施されたブレーキキャリパーが足元の印象を引き締める。

 

スモークがかったテールライトや随所にカーボン素材を採用することで、ラグジュアリーさの中にも泰然とスポーティさを息づかせている。

 

内装は、明るくもオレンジがかった赤のレザーで全体が仕立てられ、上品な華やかさが演出されている。アストンが巧みに表現した赤の華やかさからは、選手のレースにかける情熱とそれを応援するファンの熱狂が伝わってくる。

 

また、差し色の爽やかな「ペール ブルー」は、テムズ川を連想させる。サイドシルには、カーボンパネルの上に浮き上がるようにステンレス製のオールが交わったロゴがあしらわれており、特別なワンオフモデルであることを静かに主張する。

 

このワンオフモデル、大会期間中に会場で展示されており、価格はおよそ2921万円からだそうである(2018年7月4日時点)。

 

▶DB11クラシック・ドライバー・エディション

DB11クラシック・ドライバー・エディションとは、目利きの名車収集家やエンスージアスト向けにクルマを中心とした様々なライフスタイルを提案する「クラシック・ドライバー」というウェブサイトの20周年を祝うモデルである。

 

ではなぜ、アストンマーティンが「クラシック・ドライバー」を祝うのか。

 

「クラシック・ドライバー」の設立者であり、起業家、そしてアストンマーティンの熱心なコレクターでもあるアレクサンダー・クナップ・フォイト氏は1991年にハンブルクにアストンマーティンの正規代理店を開くなど、コレクターの域を超えてアストンマーティンの販売にも積極的に貢献してきた人物だ。

 

そんなフォイト氏とアストンマーティンが長年かけて築き上げてきた親密な関係を祝って創られたのが、今回の特別モデルなのである。

 

▶DB11クラシック・ドライバーの仕立て

ボディカラーは「クラシック ドライバー グレー」というもので、「クラシック・ドライバー」のウェブサイトのブランドカラーである奥行きある深いグリーンと、1960年代のアストンを代表するチャコールグレーを融合し昇華させた特別色である。この特別色は一見上品なグレーだが、特殊なパールフィニッシュにより、太陽の光を浴びるとグリーンに輝いて見えるというのだから驚きである。

 

アクセントには、カーボンファイバーボディパックという「サテン アイフェル グリーン ラッカー」という特別な仕上げのグリーンのカーボンパネルが、ボディだけでなく内装のトリムにもあしらわれている。

 

そして、ヴォランテのソフトトップには、「ウェストミンスター グリーン」という色が採用されている。様々なグリーンを散りばめることで、「クラシック・ドライバー」への敬意と祝意を表する、アストン流の礼儀が窺える。

 

内装は、深みがありながらもどことなく明るさも残るグリーンのレザーで全体が覆われており、シートのヘッドレストには「クラシック・ドライバー」のロゴが刺繍されている。

 

サイドシルには、シリアルナンバーが刻印された「クラシック・ドライバー」のロゴがあしらわれており、フェンダーには、「クラシック・ドライバー」のハンドメイドのエナメル製バッジが輝く。

 

アストンマーティンを愛する人へ贈られた特別なDB11は、20台限定となり、価格はおよそ2910万円(2018年7月4日時点)となる。

 

▶紳士たる者、こうあれ

アストンマーティンは2つのパートナーシップを祝うべく、特別モデルを創った。2台の特別モデルは、相手への敬意と謝意をアストン流に表現したものだ。そこに商業的な思惑があるのは百も承知だが、今は一旦脇へ置いておく。

 

相手を敬う、相手に感謝する、相手あっての自分という考え方は、「礼儀」というものに包含され、そしてそれは万国共通である。世界中の人々が「礼儀を重んずること」で、気持ちよく時間を過ごすことができることを無意識に納得している。

 

お互いを認知し合うことで安心して生活できる人間にとっては、お互いを尊敬し認め合う「礼儀」というものが不文律なのだろう。

 

相手のことを思い、真剣に思いを巡らし、自分の持つリソースの中で最大限の賛辞を贈る、そんなアストン流の「礼儀」を表現したクルマ創りには、やはり共感せざるを得ない。そして、そんな「礼儀」は、紳士に不可欠な資質である。

 

紳士が備える理性の静けさと温もりある相手への思いやり、いざという時の勇猛果敢さ。アストンマーティンはこんな思いをデザインや性能に込めて、「紳士たる者、こうあれ」と静かに語りかけているような気がする。

 

なるほど、女王陛下と英国国民に忠誠を誓うちょっと過激な紳士、ジェームズ・ボンドの愛車がDB11であることの謎が解けたかもしれない。

 

Photo source:ASTON MARTIN

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