7月18日、アウディは3代目TT に4年ぶりとなる大幅な改良を施したフェイスリフトモデルを発表した。
1995年のフランクフルトモーターショーでコンセプトモデルが初めて姿を現した時、コンパクトでスポーティな独特のフォルムに世界中の視線が集まったものだ。そして、1998年の販売開始から20年の時を経て、その独特のフォルムはよりスポーティな流線形へと進化し、フロントマスクの鋭い眼光が路面を見つめる。
TTのシンボルとも言うべき野球ボールをモチーフにしたシフトノブと、レーシーな雰囲気のアルミ製フューエルキャップは、デビュー当時から変わらず今も健在である。
デビュー20周年を迎える記念の年に施された改良とはいかなるものか、じっくりと見ていくこととしよう。
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▶スポーティな存在感が増したエクステリア
フロントマスクは、鋭いヘッドライトに挟まれたシングルフレームグリルが新たな3次元の立体模様へと刷新され、サイドの大きくなったエアインテークが逞しさを強調する。
リアはフロントマスクほどの変更はないが、アルミ製のフューエルキャップの奥にある給油キャップが今回のモデルから廃止され、代わりに、ガソリンの給油ポンプのノズルを直接アルミ製のフューエルキャップに差し込んで給油するシステムが新しく導入された。
レーシングカーを彷彿とさせる凝った演出である。
ホイールもデザインが一新され、足元をよりアグレッシブに引き立ててくれている。さらに、オプションのSライン・エクステリア・パッケージを選択すると、そのスポーティなキャラクターが過激さを増す。
専用のフロントスプリッター、さらに大きなエアインテーク、ブラックチタン製のフロントグリル、サイドシル、大型のリアディフューザー、テールライト下のエアインテークを専用パーツとして備えるのである。
コンパクトスポーツカーであるが、その存在感たるや「小さな巨人」と言っても過言ではなく、威圧的なほどの強烈なオーラを放つ。なお、ボディサイズにほぼ変更はなく、ホイールサイズはオプションを含め17インチから20インチとなる。
新色のボディカラーとしては、コスモブルー、パルスオレンジ、ターボブルーの3色が用意されるようだ。ロードスターの電動ソフトトップは、ブラックとグレーの2色展開となり、ソフトトップは50㎞/h以内の走行で、10秒程度で開閉できる。
フェイスリフトしたTTは、そのボディサイズ以上の存在感を放ち、道行く人々も、その洗練されたスポーティな容姿に見とれてしまうのではないだろか。
▶ドライバーをその気にさせるコックピット
ドライバーオリエンテッドなコックピットは不動であるが、TTから始まったアウディバーチャルコックピットにはさらに磨きがかかり、オプションでスポーツディスプレイというものが用意されるようになった。
これはRSモデルのようなエンジン回転数表示、トルク、Gフォースの表示がされるもので、視覚的にドライバーをその気にさせることは間違いないだろう。TTを購入するなら、ぜひ選びたいオプションの一つではないだろうか。
そして、アウディのインフォテイメントシステムであるMMIはA8譲りの最新式で、従来型よりも洗練されたボイスコントロールや、指による手書き文字認証システムまで備えた先進装備である。
また、4G LTEのWiFiホットスポットを搭載することで、コネクティビティの充実も抜かりが無い。さらに、680Wのバング&オルフセン製スピーカーもオプションで用意されるようだ。何よりも、標準装備が充実したことは歓迎すべきことだ。
アウディ・ドライブセレクト・ダイナミックハンドリングシステム、オートライトセンサー、レインセンサー、ヒーター付きサイドミラー、マルチファンクションステアリングが標準装備となり、プレミアムコンパクトスポーツの価値を一層上げている。
TTのコンパクトな空間は、アウディの妥協ない上質な仕立てで、その階段を一段上へと上っている。
▶強化された3種類のパワートレイン
パワートレインには、3種類の2.0ℓ4気筒ターボエンジンがラインアップする。残念ながら、今回のモデルからディーゼル(欧州仕様)は廃止される。40TFSIは197ps/320Nm、45TFSIは248ps/370Nm、TTSは306ps/400Nmとなり、全てのエンジンパワーが強化されている。
トランスミッションは、6速マニュアルか7速Sトロニックの組み合わせとなるのだが、TTSは7速Sトロニックのみの設定となる。TTSの0-100㎞/h加速は、4.5秒(ロードスターは4.8秒)となり、従来モデルよりも0.1秒速くなっている。
そして、今後の継続が注目される2.5ℓ5気筒ターボを搭載するTTRSは、2019年中には登場するものと見られる。しかしながら、今年9月から欧州に導入される世界共通の排出ガス・燃費基準「WLTP」は現行の「NEDC」よりも厳しい基準であり、改良版TTRSが現行よりもパワートレインを強化できるかは分からない。
ちなみに、ゴルフRは、WLTPに適合させるため2.0ℓ4気筒ターボエンジンの現行の出力を310psから300psへと引き下げる。エンスージアストにとっては何とも複雑な心境ではあるが、大局から考えれば、もっと早くに取り組んでおくべき課題であったのだろう。
さて、トップモデルが登場するまでの暫定トップは、TTSブラックエディションというものが務めることになる。この特別モデルは、LEDライトを備え、後輪近くのサイドボディにフォーリングスステッカーがあしらわれ、固定式のリアウィングを装着し、専用の20インチのグロスブラックのホイールを履く。
そして、コックピットは専用のレザーパッケージで仕立てられる。TTSのカッコいい豪華バージョンというところだろうか。
▶オンザレールの足回り
改良版TTでは、正確でダイナミックなハンドリングを実現すべく、Sラインパッケージかアウディマグネティックライドをオプションで選択すると、車高が標準モデルより10㎜低くなる。
そして、プログレッシブステアリング、リアの4リンク式サスペンション、ESCによりこれまで以上に気持ちの良いコーナリングはもちろん、ドライバーの操作に忠実なオンザレール感覚の走りを提供してくれるだろう。
▶今後の展開
フェイスリフトを遂げたTTは今年の10月以降、欧州を皮切りに世界中で順次発売される。価格はクーペがおよそ460万円(2018年7月18日時点)から、ロードスターがおよそ493万円(2018年7月18日時点)からとなる。なお、コンセプトモデルのTTをモチーフにした20周年記念モデルも999台限定で同時発売されるようである。
▶「技術による先進」でポルシェを嫉妬させろ
ふたを開けてみれば、ビッグマイナーに近い手の入れようではないかと思える。
ただ、足回りへの改良が他の改良と比べると、幾分か大人しかったようにも思える。強力なエンジンには非の打ち所がないが、走りにおいてライバルの718に近づけたのであろうか。
そのボディサイズからできることには限界があろうが、「技術による先進」でもってポルシェも嫉妬するような、しなやかでバランス感覚の優れた足さばきを手にしてもらいたい。
とはいえ、TTは累計およそ60万台の売り上げを誇る人気と実力を備えたトップレベルのコンパクトスポーツカーであることに違いはない。
Photo source:Audi
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