生ける名車シリーズ第一弾:初代ゴルフ(後編)

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初代パサートと初代シロッコに続くジアウジーロの3作目として登場した初代ゴルフは、アウディのFF技術の採用により、小型車の常識を打ち破るパフォーマンスと実用性を発揮し、FFハッチバックの革命児となる。

 

小型大衆車にして類稀なる実用性を備えたゴルフに、スポーツカーのような運動性能を詰め込んだGTIは、並みいる四輪の韋駄天らを脅かす「ホットハッチ」という新たな領域を開拓することになる。

 

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▶「911キラー」と呼ばれたGTIの誕生

初代ゴルフ発売からわずか2年後の1976年、早くも元祖ホットハッチである「GTI」が登場する。1976年と言えば、イーグルスが「ホテルカリフォルニア」をリリースした思い出深い年でもある。

 

初代GTIには、ボッシュKジェトロニックが組み合わされた1.6ℓの4気筒エンジンが搭載され、4速MT(1979年に5速MTへ)が組み合わされた。パワーは、110ps/137Nmを発揮。0-100㎞/h加速を10秒でこなし、最高速度は182㎞/hに達する、当時としてはスポーツカー並みの性能を備えていた。

 

足回りは、専用のチューニングが施されたサスペンションとブレーキに加え、ビルシュタイン製ダンパーを備えるだけでなく、前後にスタビライザーを装着するなど、走りに徹底的にこだわって造り込まれた。

 

「羊の皮をかぶった狼」ことGTIは、家族みんなを乗せられるスポーツカーとして、世のお父さんたちのハートを鷲掴みにした。

 

世のお父さんのアイドル的クルマとなったGTIは、その扉を開くと、お父さんたちの心を巧みにくすぐるアイテムがぎっしりと詰まっていた。しっかりと握れるよう工夫された太めのレザーステアリングの先には、興奮の220㎞/hまで刻まれたスピードメーターが鎮座しており、視線を斜め下へ落とすと、ゴルフボールをモチーフにしたシフトノブが、お父さんを見つめる。「よし、妻を説得するぞ。必ずうちのガレージに連れ戻るからな!」と覚悟を決めたお父さんたちは、世界中に数えきれないくらいいたはずだ。

 

パワフルなエンジンと強靭でしなやかな足回りを備えたGTIは、アウトバーンでも実に速く、「911キラー」と呼ばれるようになった。通常モデルのゴルフは、1975年からヤナセが正規輸入を開始したが、元祖ホットハッチのGTIは、排ガス規制などにより、当時の日本では正規輸入ができず、並行輸入でしか手に入れることができなかった。

 

しかし、世界中で高評価を得たGTIをみすみす放っておくわけにもいかず、2代目ゴルフからは、GTIの日本への正規輸入が開始されるようになった。日本でのホットハッチの幕開けである。

 

Source:Carfection

 

▶永遠のベンチマーク、ゴルフ

初代ゴルフのデビュー前のシロッコによるテストマーケティングと巧みなラインアップ展開、ジアウジーロの魔法によるコンパクトでありながら使い勝手の良い実用性、小型車とは思えないパワフルなエンジンと洗練された足回り。戦略、デザイン、品質、どれをとっても小型大衆車の域を超える完成度を備えた初代ゴルフ。

 

この3つの要素は、40年以上経たった今も連綿と受け継がれ、進化と洗練を繰り返しながら孤高の頂を目指し、歩みを止めることはない。そして、後ろを振り返ってみると、世界中の自動車メーカーがゴルフに必至で追いつこうと奮闘している。

 

しかし皮肉なことに、ライバルメーカーは、ゴルフをライバルとしてではなく、お手本として自社のクルマを開発している。そう、ゴルフを絶対に追い越せないばかりか、超えられないと、自ら認めてしまっているのだ。

 

ゴルフをお手本とする。この事実こそ、ゴルフが永遠のベンチマークと言われる所以ではないだろうか...

 

▶初代ゴルフ・スペック表

 

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Photo source:Volkswagen, Carfection

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